「燃料電池車は地球環境のための必須技術。普及に向け取り組みを進める」
環境問題が主要テーマの一つとなる7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)直前という、タイミングで開かれたこの日の生産開始式で福井威夫(たけお)社長はこう述べた。式典には米国での最初の購入者となるカナダ人女優のローラ・ハリスさんら5組も招かれ、環境保全への意識が高い富裕層らにアピールした。
燃料電池車は水素を大気中の酸素と反応させて電気を発生させてモーターを駆動させる仕組みで、走行中に排出するのは水だけ。生産を始めたFCXクラリティはホンダにとっては3代目の燃料電池車で、業界初となる量産タイプのセダン型。米国でのリース価格は月600ドル(約6万5000円)で、トヨタ自動車の燃料電池車などよりも安い。
走行時のCO2排出ゼロといえば電気自動車もある。しかし現在、充電1回当たりの走行可能距離は200キロメートルに満たず、充電時間も専用の装置を使わなければ半日かかる。一方、FCXクラリティは東京・有明などにある水素補給施設で圧縮水素ガスを1回充填(じゅうてん)すれば620キロメートル走れる。ただ、こうした施設は米カリフォルニアでは多数あるものの、日本では都内などに数カ所しかない。
また、燃料電池車にはコストという弱点もある。心臓部の燃料電池には、希少金属で価格が高騰している白金(プラチナ)を大量に使用する。ホンダは新型車の部品点数を従来車と比べ74%削減した。それでも、コストは「1台あたり数千万円」(幹部)。福井社長が普及の目安とする「売価1000万円以下」には、さらなる技術革新が求められる。



